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2017年3月22日水曜日

土地柄による哲学的影響

今の私は東京と京都とどっちにも執着を感じている。……飛入り者の私にとっては京都はまことに静かなところである。それに反して東京へ帰ると私は家庭の人間となり、複雑な近親関係の中に身を置くことによって計らぬ煩わしさや悩みが生じてくる。……「才能」にとっては京都の生活が願わしいが、「性格」にとっては東京の生活も欠きがたいというのが私の真実である。……

哲学者がどこに住むかということはその哲学におのずから反映される。……東京と京都。私は私の思索にあって、内容に東京の豊富さを、形式に京都の静けさを、おのずから反映させることができれば幸(さいわい)だと思う。

 九鬼周造(1991)『九鬼周造随筆集』(菅野昭正編)p.99-103, 岩波文庫

2017年3月20日月曜日

自分の態度ひとつですべてが思索の材料を提供してくれる

私はもちろん思索と読書の外に自分勝手な時の費し方もしている。しかし浪費されたかのような時間は実は間接に思索と読書とを助けていることを知っている……私は時たま芝居を見たり映画を見たりするとかなり強い感動とかなり貴重な教示とを受ける。来たためにつまらないことをしたという感じは、ほとんど一度もしたことがない。かえってもっと時々来ようと考える。二、三日気まぐれな旅をしても、一夕を酒の肴に浸っても、またと換えがたい体験をする。自分の態度ひとつですべてが思索の材料を提供してくれる。

 九鬼周造(1991)『九鬼周造随筆集』(菅野昭正編)p.45, 岩波文庫